【兄弟監獄】「監獄都市の住人」ウィザードリィ外伝 五つの試練リプレイ 最終回【真ノ勝者】

禁呪「セブンスブーン」の連発により「特A級監獄」を統べる三大勢力を制圧した全員盗賊パーティー。最終決戦に向けて、一旦「B級監獄」へと帰還した。

では、探索を開始する。

「特A級監獄」での苛烈なる戦闘により、ついに「封印監獄」への侵攻手段を入手することとなった。だが、先ずはこの地下監獄の長に面会を求め、事前の承認を得なければならない。筋を通す。これ大事。

残念ながら交渉は決裂した。老体の手を煩わせるのは気が引けるが、こちらも恩赦が掛かっている。止むを得まい。実力行使だ。基本戦術はニュークリアブラストによる殲滅だが、念のため、相手の攻撃呪文に対する備えもしておきたい。即ち、核撃3発&禁呪3発だ。

ニュークリアブラストの業火が三度炸裂した後、セブンスブーンの奇跡は「呪文の効果を上げる」「魔法からの保護」「健康と復活」を引き当てた。その直後に「監獄長」が唱えた呪文は……「カルネージ」である。

全敵対象の集団即死呪文。これ一発で即全滅という悲劇的な結果もあり得る、ある意味でニュークリアブラストよりも恐ろしい呪文だ。もしも禁呪による耐魔法結界が間に合っていなかったら……と想像すると肝が冷える。

しかし、敵方の呪文攻撃を封じた以上、恐れるものは何も無い。後は、セブンスブーンによるレベル低下を最小限に抑えた後、確実に仕留めれば良いのだ。すまぬ。ご老人。

ホブ盗賊Aの1レベル低下を代償に、難なく勝利。魔法防御の結界を張るのが遅れていれば、即死呪文によって全滅していた可能性も否定できない。とは言え、結果が全てだ。

さあ。いよいよ最後の戦いへと挑むのだ。

これまでに踏破してきた地下監獄の各階層とは明らかに雰囲気の異なる、静謐かつ重苦しい空気が支配する「封印監獄」の地。ここで如何なる死闘が繰り広げられたのか……その詳細をここで語るのは無粋であろう。

では、時を少し先に進める。

ここから先は、地下監獄における生死を懸けた探索行とは似ても似つかぬ、取るに足らない監獄都市の日常風景に過ぎない。

最終決戦を辛くも生き延び、地下監獄における反乱計画の動かぬ証拠を掴んだ全員盗賊パーティー。市庁舎にて事の顛末の報告を行い、ついに恩赦を承認する書類を入手した。

これでこの監獄都市ともおさらばだ。街を離れる前の最後の夜だ。酒蔵から盗ってきた高級酒で乾杯しようじゃないか。

「特A級監獄」における略奪行為で稼いだ金もたんまり貯まっている。酒場のテーブルを貸し切り、監獄都市における最後の晩餐を楽しむ盗賊達。高級酒のボトルを開け、杯を交わし、宴は続く。

数刻が過ぎた頃、すっかり酔いの回った人間盗賊が、突然大声を上げた。

無い! あの書類が無いぞ!

騒然とする全員盗賊パーティー。命懸けの探索行の末に手に入れた、恩赦を証明する「書類」が彼らの手元から忽然と消えていた。

その騒動を、酒場の片隅で一人眺める者がいる。

ドワーフ盗賊その2。全員盗賊パーティーの謀略に巻き込まれ、看守室の戦闘でロストしたドワーフ盗賊その人を、兄貴分と慕っていた男である。彼に地下監獄の探索行を生き延びる才覚は無い。しかし、日々の生活の糧を得る為に磨かれていった掏摸の腕は、勝利の美酒に酔う者の懐から一通の書類を掠め取るには十分であった。

ドワーフ盗賊の復讐を果たした彼は、小汚い荷物入れから徐に安酒を取り出すと、目の前に置いた2つの杯に酒を注ぎ、亡き兄貴分の魂に人知れず献杯を捧げる。

兄貴。やりましたよ。

ドワーフ盗賊その2の頬を、一筋の涙が伝う。

真の勝者とは何か。次々と襲い来る幾多の試練を乗り越え、生死を懸けた探索行を完遂した者のことでは無い。如何なる手段を用いても、最終的に目的の品を手に入れた者のことを言うのである。

(「監獄都市の住人」ウィザードリィ外伝 五つの試練リプレイ・完)

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