『ウィザードリィ外伝 五つの試練』Steam版シナリオエディタを用いた、ユーザーシナリオ制作講座。今回は「第5回」となる。
シナリオに登場させる様々な「アイテム」のデータを設定する作業に着手する。
アイテムデータの事前準備
まずはシナリオエディタ作業における定石通り、入力するデータを事前に作成しておく。今回の場合は「アイテムデータ」のリストだ。
アイテムの名称や種類、武器の性能、AC(アーマークラス)、売買の金額、付与する魔法効果――等々を一覧にまとめる。
これはあくまで初期案に過ぎない。シナリオの制作を進めてゆく中で修正は多々発生するだろう。「イベントアイテム」の追加は当然(そもそも称号獲得のために城砦へと持ち帰るアイテムを何にするかまだ決めていない)として、場合によっては初期リストから削除するアイテムも出てくるかもしれない。
最初の原案通りに全てが帰結することはありえないし、シナリオ制作の途中で次々と新たなアイデアが湧き出てくる瞬間こそが、ユーザーシナリオの創作過程における最大の楽しみのひとつでもある。当初の想定(=過去の自分)を超える――ことによって、シナリオの質は確実に上がってゆくのだ。
さて、アイテムデータの一覧がまとまったところで、同様に「アイテム不確定名」のリストも用意しておく。
こちらは至ってシンプルな、日本語と英語の名称のみで構成されたリストである。
では、これらのデータ(アイテムデータ/アイテム不確定名)を使い、シナリオエディタ上でアイテムデータの入力を進めよう。
「アイテム確定名」の一括入力
シナリオエディタのページ上部メニューに含まれる「データ各種」から、サブメニュー項目の「アイテム」の画面を開く。
個々のアイテムの設定ページで詳細なデータ入力を行う前に、「アイテム確定名」については最初に一括入力しておくと後の作業が捗る。画面右下の「CSV出力」ボタンをクリックし、「名称のみCSV出力」を選択。
ダウンロードされたCSVファイルを開き、「アイテム確定名(日)」「アイテム確定名(英)」の列に、事前に用意しておいたアイテムデータリストからアイテムの名称をコピーして入力する。
このCSVファイルを保存して閉じたら、今度はシナリオエディタ上で「CSV入力」ボタンをクリックする。
「名称のみCSV入力」のオプションから、先程「アイテム確定名」を入力したCSVファイルを指定し、シナリオエディタ画面にアップロード。すると――
アイテム一覧画面に「アイテム確定名(日本語)」「アイテム確定名(英語)」が入力済みの状態となる。
「アイテム不確定名」の一括入力
アイテムの「確定名」の一括入力が済んだら、次に「不確定名」についても同様に一括入力する。
アイテム「不確定名」の入力画面の右下「CSV出力」ボタンをクリックし、CSVファイルをダウンロード。
ダウンロードされたCSVファイルを開き、「確定名」の一括入力の手順と同様に、事前に用意しておいた「アイテム不確定名」のリストから名称(日本語/英語)をコピーし、CSVファイルを保存する。そして「CSV入力」ボタンをクリックし、当該のCSVファイルをシナリオエディタ画面にアップロードする。
アイテム不確定名の入力画面で確認すると――「アイテム不確定名(日本語)」「アイテム不確定名(英語)」が全て入力済みの状態となっている。ディ・モールト良しッ!
アイテムデータの設定画面を開く
では、いよいよ各アイテムの詳細な設定を入力してゆこう。「アイテム一覧」画面から編集対象となるアイテムの行を選択してダブルクリックすると、そのアイテムの設定画面が開く。
先刻のCSVファイルのアップロードによって「アイテム確定名(日本語)」「アイテム確定名(英語)」の両欄は既に入力されている。
「アイテム不確定名」については、一括アップロードした名称がプルダウンメニューに登録されているので、その中から任意の名称を選んで設定する。
アイテムの「種類」を設定
アイテムの基本的な「種類」については、「ガラクタ」以外の13種類の中から、任意のカテゴリーをプルダウンメニューで選択する。これにより、そのアイテムの種類が決定される。
「武器」は文字通り直接攻撃に使用する武器(主武器/補助武器)となる。防具類(軽い鎧/重い鎧/兜/盾/ブーツ/小手/クローク)はそれぞれ固有の装備部位で機能する。「装飾品」と「その他」ならびに「書物」は武器防具以外の装備品に該当するアイテムだ。
複数ストックが可能な消耗品は「巻物」「薬瓶」として設定する。なお「巻物」「薬瓶」「書物」については、アイテムの魔法効果として「呪文」が付与されている場合、ゲームルール設定の如何に関わらず装備不要で呪文を使用できるアイテムとなる。
ベースとなる「種類」が「武器」の場合、二番目のプルダウンメニューで「武器の種類」を選択する。選んだ武器カテゴリーによって、直接攻撃の際に表示される行動メッセージが変化する。ちなみに、武器の種類として「なし」を選ぶ(※種類「武器」と表示される)と、攻撃時のメッセージは「素手」の場合と同じになる。刃系&打撃系の混合になる。
武器の名称から判断して相応しい種類を選んでおけば、特に問題はないだろう。
三番目のプルダウンメニューは、アイテムの基本的な「種類」や「武器の種類」による分類を、さらに詳細に区分することが可能なサブカテゴリー「種別」である。
ここでの数値設定は、商店在庫の並び順に影響する――が、当初は全て[0]のままにしておき、シナリオのテストプレイを開始した段階で商店の棚の並びを変えたくなったら適宜設定すればいい。
魔法効果AUTOシナリオの場合、装飾品に自動付与される魔法効果の種類に影響するのだが、その辺りの仕様については、Steam版の『戦闘の監獄』に準じて今後変更される――はずだ。
「武器」データの設定
アイテムの種類が「武器」の場合、その得物の威力(敵モンスターに与えるダメージ)やレンジ(射程距離)、そして持ち方を指定する。
「武器の威力」の設定は、具体的なダメージの数値として[ダイスを振る回数(A)×ダメージダイス(B)+固定値(C)]を指定する。各数値を入力すると、その下に「最小ダメージ」「最大ダメージ」の値が表示されるため、それらを参考に数値設定すればいい。
なお、アイテムの魔法効果「最大攻撃ダメージ(+)」「最大攻撃ダメージ(-)」は、武器の威力の「ダメージダイス(B)」の値を[0~99]の範囲で増減させるため、この「武器の威力」の設定で「ダイスを振る回数(A)」の値を大きくすればする程、それらの魔法効果の影響も大きくなることに留意しておきたい。
武器以外のアイテムの場合、「武器のレンジ」「武器の持ち方」ともに「武器以外」を選択する。ただし「武器のレンジ」については、武器以外のアイテムでロングやミドルに設定した場合、装備している武器が何であれ直接攻撃の射程を伸ばす便利アイテムとして登場させることも可能だ。
「スペシャルアイテム」等の設定
「スペシャルアイテム」のオプションにチェックを入れると、魔法効果AUTOのシナリオにおいて、魔法効果が固定された文字通りの「スペシャルアイテム」として登場する。
通常のシナリオでは他のアイテムと仕様上の違いは生じないが、商店在庫の区分については特別なものとして扱われ、別途「スペシャルアイテム」の棚に並ぶことになる。
「全滅時に消滅する」は、そのアイテムを所持しているパーティーが迷宮内で全滅した際、当該アイテムが確定で消滅するというオプション設定だ。ひとつしか存在しないユニークアイテムを所持したパーティーが全滅してシナリオを進めることが不可能になる――といった状況を避ける目的で使用するのが一般的だろう。
「壊れた後に変化するアイテム」は、基本的に[000 ガラクタ]を選択しておけばよい。任意のアイテムを設定した場合、魔法効果の「呪文」や「SP」の使用でアイテムが破損した際、消滅する代わりに設定したアイテムへと変化する。
なお、敵モンスターの「酸ブレス」によって破壊されたアイテムの変化については、個々のモンスターの「ブレスの設定」において別途指定する。
ちなみに、敵モンスターの直接攻撃オプション「武器破壊」「鎧破壊」によって武具が戦闘中に壊された場合には、「壊れた後に変化するアイテム」の設定内容に関わらず、完全に消滅する。
「装備設定」
「装備設定」では、アイテムを装備可能な「職業」「性別」「性格」「種族」の4つを指定する。
ここで装備チェックを入れなかった項目に該当するプレイヤーキャラクターについては、そのアイテムを装備することができない。
対象以外の性格でも装備は可能だが呪われる、というアイテム(悪の鎧etc.)を作成する場合には、この「装備設定」では性格の全てに装備可能チェックを入れておき、魔法効果の「性格限定装備」で別途設定することになる。
「在庫数」「AC(アーマークラス)」等の設定
「在庫数」は、地上商店の初期状態の在庫数を指定する。[0]ならば在庫なし。[-1]は在庫無限。
「AC」は、そのアイテムの基本的なAC(アーマークラス)を設定する。ACが低い方が敵の直接攻撃を回避しやすくなるため、ここで設定するACが低いほど、防具として優秀なアイテムということになる。ただし、アイテムの「種類」が防具以外でもAC値を設定することは可能。ACを下げる武器――なんてのもありだ。
なお、戦闘開始時にプレイヤーキャラクターやモンスターのACが[99]の場合に限り、物理的な直接攻撃が全て無効化されるという『五つの試練』に特有の仕様が存在する。物理攻撃無効キャラクターを実現するため、ACを激しく上昇させるアイテムを用意する場合もあるだろう。
「識別の難易度」は、ビショップ(司教)の鑑定能力や魔法効果「博学の書」による、アイテム鑑定時の難易度を設定する。
例えば、この難易度が[7]の場合、鑑定者のレベルが同じく[7]ならばアイテム鑑定に成功する、と大まかに考えておけばよい。(※厳密には[鑑定者のレベル+2]の範囲までなら鑑定が成功する可能性がある――はず)
「購入価格」は、商店(地上/NPC)においてアイテムを購入する際の価格。購入価格が「ゼロ円」のアイテムは、商店で売却することができない。(=商店の棚に並ばない)
「識別、売却価格」は、商店(地上/NPC)におけるアイテムの識別、ならびに売却価格。ちなみに売却価格「ゼロ円」でも、商店で「無料で売却」することは可能。
アイテムの「魔法効果」の設定
アイテムに付与する「魔法効果」については、各アイテムごとに最大「6つ」まで設定することができる。選択した魔法効果の種類によっては、「オプション」「その他」の項目を合わせて設定する必要がある。
アイテムデータの「CSV出力」
アイテム設定画面の下部にある「CSV出力」ボタンをクリックすると、全てのアイテム設定データをCSVファイル形式でローカルPCに保存しておくことが可能。データのバックアップ手段のひとつとして覚えておきたい。
ゲームルール「キャラクター作成時の所持アイテム」の設定
アイテムデータの設定が一通り完了したら、シナリオエディタのページ上部メニュー「シナリオツール」から、サブメニューの「ゲームルール設定」を開き、さらに「職業と種族の設定」をクリック。
「作成時に持たせるアイテムとお金」の項目で、キャラクター作成時に最初から所持しているアイテム、ならびに所持金の額を任意に設定する。
これで個々のアイテムの設定は完了だ。
次回は「宝箱の設定」を行う。