逃亡したハルシュタインの跡を追い、「レベル1」の探索者のみが立ち入りを許されるダンジョン「テッドの迷宮」へと侵入した全員盗賊パーティー。早々に発見した迷宮内の宿屋に宿泊し、いきなりマスターレベルを突破した。事前に「素手の試練」で鍛錬を積んできた者達だ。面構えが違う。
では、探索を開始する。
迷宮の入口付近に、この「テッドの迷宮」を探索する上での注意書きが掲示されていた。「魔法の封印されし迷宮」の意味は、常駐呪文を詠唱しようとした時点で判明した。
既に習得済みの呪文を使用することができない。
呪文を忘れたわけではない。当該呪文レベルのMPも足りている。……が、唱えることが「無理」なのだ。それが「封印」の意味するところなのだろう。当面は不便な思いをすることになるが、それ程心配する必要はないはずだ。「封印」とは「解く」ものであるというのが古今東西の共通認識である。
なお、こちらも注意書きで言及されている通り、現在のところ迷宮からの出口も封鎖されている。
さて、この閉ざされた迷宮内で生き延びる為に必要な施設のうち、「宿屋」ついては既に見つかっている。そして宿屋から程近くの位置に「寺院」を発見。
これで治療&蘇生の手段は確保できた。
次は「商店」を探すのだ。
フロア内を暫く歩き回ってみたが、肝心の「商店」が見つからない。まさかとは思うが、この階層に「商店」は存在しないのだろうか。開始したばかりの探索に早くも暗雲が垂れ込める。
探索の拠点となる「商店」が見つからないとなると、2つほど深刻な問題が生じる。
最初の問題は、戦闘後の宝箱から入手したアイテムを鑑定できないということだ。
アイテムに対してランダムに魔法効果が付与されている(もちろん好ましくないマイナス効果も含まれる)可能性がある以上、装備する前に吟味は必要だ。
だが「全員盗賊」であるが故、このパーティーにはアイテム鑑定役の司教がいない。これまでは城塞都市の「ドジャー商店」にて鑑定してきたわけだが、一度入ったら目的を達成(=宝珠の奪還)するまで出られないこの「テッドの迷宮」では、その鑑定手法が使えない。つまり、迷宮内の商店を発見するまで、入手したアイテムを装備することができないのだ。
二つ目の問題は、フロアマップの確認手段が無いということだ。
この盗賊パーティーに、マップ表示呪文「ウィザードアイ」を詠唱できる者は存在しない。
これまでに踏破した迷宮では、事前に地上の商店で購入した「方位の巻物」を使用しフロアマップを確認してきた。
しかし、この「テッドの迷宮」は、地上からアイテムを持ち込むことが禁止されている。したがって、「方位の巻物」を使用するためには、迷宮内の商店から購入するしかない(もちろん販売していればの話だが)のだ。
敵の落とす宝箱の中身に期待する手もあるが、余りにも運の要素が強すぎて当てにはできない。フロアの構造を把握する手段なしでは、探索が遅々として進まないであろうことは明白だ。さてどうするか……
そうだ。マップを見られないのならば、自分で描けばいいじゃない。
このままでは埒が明かないため、最終手段を用いることにした。「手描きマップ」である。
フロア内を逐一歩き回りながら、自らの手でマップを記してゆくのだ。そもそも「マップ表示呪文」という魔術的奇跡が存在しなかった古の時代においては、誰もが自らの手で迷宮のマップを描き、攻略を進めていたのである。いまこそ先人の流儀に習い、古の手法にて探索を進めよう。
手作業で少しずつフロア構造を解き明かしてゆく。これはこれで楽しい。これからの時代はオートマップよりも手描きマップなのだ。そう思い始めた矢先……
あった。「迷宮のよろずや」を発見。これは紛うことなき商店であろう。
「巻物&薬瓶」の在庫を最優先で確認する。
城塞都市の商店と比べると品揃えの点で劣るが、最も欲しかった品々は普通に販売されている。とりあえず「方位の巻物」ならびに「眠りの巻物」を大量に購入しておく。さらに「気付け薬」と「毒消し」も相当数を常備用として入手。
できれば後衛用に「弓」が欲しい状況だが、残念ながら武器の類いは一切売られていないようだ。ドロップアイテムの鑑定は依頼できるため、武具の充実については今後の敵からのドロップに期待しよう。
では早速、「方位の巻物」を使ってみる。
素晴らしき哉、マップ表示呪文。手描きマップよりも数段便利だ(掌返)
これで探索が捗るというものである。作成途上の手描きマップをそっと仕舞い込み、改めて「地下1階」の攻略を進めよう。
格安でパーティーメンバー全員のHPを回復できる浴場も発見。HP回復手段の限られた盗賊たちにとって、非常にありがたい施設である。
さて、現状「地下1階」で探索可能な範囲は粗方踏破した。
階段を下り、次の階層の攻略へと向かおう。