強敵ララ・ムー……いや「トーガ・ラマ」との死闘を制し、「地下8階」へと侵攻する全員盗賊パーティー。この「リュードの迷宮」の攻略も、いよいよ終盤戦か。
では、探索を開始する。
岩盤を掘り抜いた状態そのままの前階層とは様相が一変し、白き石造りの人工的な迷宮が姿を現した。地下深くに芸術的なまでに見事な建造物を造り上げたのは、一体何者なのであろうか。まるで宮殿のようにも思える。
反対側から施錠された扉ばかりで先に進むことができない。パーティーメンバー全員盗賊にも関わらず誰一人として探知しないが、これはシークレットドアが隠されているのか。
やはり隠しドアであった。先へと進む。
敵は強いが、現状の戦力で対応できないレベルではない。盗賊一行も強くなったものである。この階層で探索可能な範囲は限られているため、このまま「地下9階」へと降りることにする。
もはや「リュードの迷宮」における定番となったダークゾーン先輩こんにちは。
荘厳な白き石壁を鑑賞していたい気もするが致し方ない。このフロアでも「方位の巻物」の消費量が半端ないことになりそうである。
ちなみに「地下8階」ならびに「地下9階」は、やはり何かの宮殿か城砦を模した構造であることがマップの端々から窺い知れる。
なお戦闘後に敵がドロップするアイテムに関しては、魔法効果が「5つ」まで付与された品々が拾えるようになった。
強大な敵との戦闘に苦戦しながらも、探索可能な範囲のマップを埋めてゆく。
サフォケーションの呪文を習得済みならば一瞬で塵化できそうな敵も出てくるが、残念なことに「窒息の巻物」3回分しか手持ちがないため、使うタイミングの判断が難しい。
戦闘は確かにキツいが、それ故にトレハンも捗る。全敵掃討呪文「デッドリーカズム」や転移魔法「テレポーテーション」といった、上位呪文の巻物が普通に入手できる状況になってきた。
さらには「キュアオール」（状態異常治療＆HP全回復）や「ヒールパーティー」（パーティー全体HP回復）、そして「レイズアッシュ」（死亡＆灰からの復活）の効果を秘めた薬も。
魔法使い？ 僧侶？ 彼らは必要ないんじゃあないかな（慢心）
巻物や薬瓶だけではなく、新たな「書物」も発見した。「生命の書」である。
ちょうどレベルアップの時を迎えた「ホブ盗賊Ｃ」がSPを解放し、蘇生呪文「レイズデッド」を習得。そのままレベルアップし「僧侶呪文Lv5」を更に追加で複数身に付けた。
「地下9階」の攻略が佳境に差し掛かる頃、「魔力の泉」を発見。今回の探索では初めてのことである。
キュアオールの呪文が使用可能な今となっては、「魔力回復」は即ち「状態異常治療＆HPの完全回復」と同義である。
そしてさらに攻略は進み、マップは埋まり、またしても「例の老人」の試練と向き合うこととなった。
五つの「防具」を集めろ……だと？ その昔、別の迷宮でも似たようなクエストを課された記憶が。今回は「剣」が含まれていない分、少しは安全……なのか？
当該の試練に挑戦する場所が何処にあるのかは既に分かっている。「地下8階」の四隅、そして「地下9階」に一カ所だ。
最初に「地下8階」の北西部の扉から攻略を開始する。「呪われた盾」の試練である。
盾に埋め込まれた金剛石が妖しい緑色の輝きを放っている。お供の熊たちには早々に消えてもらい、本命の「呪われた盾」との勝負に集中したいところだ。
当初の予定通り、熊さんは順調に排除できたが、肝心の「盾」に攻撃が当たらない。アーマークラス（AC）が低いのだろう。そりゃ盾だからな。
そうなると問題は相手のACを悪化させる手段を持ち合わせていない点だ。「ダークネス」も「テラー」も「トータルテラー」も詠唱できる者はいない。「ブレイクスクリーン」で呪文抵抗を下げれば、攻撃呪文で倒せるだろうか。
半分くらいはレジストされるが、呪文抵抗を貫通すればエナジーボルトが効果的な様である。このまま押し切れるか。
相手のHPが相当高いため苦戦したが、何とか勝利した。一旦帰還し、次戦に向けた準備を整える。
戦いの中で実感した通り、「呪われた盾」のACは「-10」とかなり低い。これでは盗賊の貧弱な攻撃がほとんど通用しないわけである。
呪文抵抗率も「80％」と高いが、こちらについてはブレイクスクリーン連発で下げることが可能だった。なお「弱点：雷」となっている。図らずもエナジーボルトの呪文で弱点を狙い撃っていたわけだ。
恐らく他の「防具」も基本性能は似たようなものだろう。ACの低さにより物理打撃が当たらない以上、やはり呪文抵抗率を下げてからのダメージ呪文が有効な（と言うよりも唯一の）戦術となりそうだ。
ちなみに、今回入手したアイテムは「ハルシュタインの盾」であった。
魔法効果が「呪い」オンリーな点は残念だが、アーマークラスが「-10」というのは魅力的だ。どのみち物理攻撃がほとんど通用しない戦闘が続くことになるのだ。攻撃の命中率が低下するリスクを背負ってでも、防御重視で前衛に装備させることにする。
次は「地下8階」の南東部にある「呪われた鎧」の扉を開ける。
戦術は「盾」とほぼ同じ。邪魔な後続連中を先に始末し、最後に残った「鎧」の呪文抵抗を下げつつ攻撃呪文を放つ。
「盾」の攻略には雷属性呪文のエナジーボルトが威力を発揮したが、今回はそれほど効果的とは言えない模様。ならばギガファイアとフリーズを試す。弱点属性を探るのだ。
炎も氷も効果がいまいちだ。MPが無駄に消費されてゆく。そして堅い。しかし、攻撃呪文の有効性に期待できない以上、最後は打撃で削るしかないのか。
敵味方ともに打撃がほとんど当たらない膠着状態に。どうすればいいんだこれ。敵のACを悪化させる呪文を使えない盗賊たちに、状況を打開する策は残されていない。ただひたすらに殴り続ける脳筋戦法あるのみだ。
この状況でブレスを吐いてくるとは。
パーティー全員まとめての被ダメージは痛い。……が、ブレス攻撃のおかげで相手のHP残量が推測できる。「ブレスダメージ＝HP残量の半分」とすると、「鎧」の残りHPは「40～50」あたりか。
魔法効果「2倍ダメージ：魔法生物系」の付与された武器を装備している「人間盗賊」の果敢な斬り込みにより、時間はかかったものの何とか勝利。今回の迷宮探索において最も戦闘ターン数を費やした激戦であった。
城塞都市へと帰還し、「呪われた鎧」のステータスを確認する。HPが「300」でターン回復あり。睡眠ブレス持ち。序盤でブレス攻撃を喰らっていたら恐らく全滅していた。
今回入手した「ハルシュタインの鎧」は例によって前衛に装備させ、防御面を強化する。
では次の試練だ。「兜」へ挑んでみようか。
やはり後続モンスターを先に倒し、残った「兜」との長期戦を覚悟する展開になるのだろう。
おや？ 「呪われた兜」に前衛の物理攻撃が当たるぞ。
意外と簡単に倒せてしまった。
「呪われた兜」のステータスを確認してみると……。
属性攻撃に対する「抵抗力」こそ充実しているものの、「被ダメージ半減」の能力は持っていない。しかも「盾」や「鎧」と比較して、ACやHPも明らかに見劣りする。フフフ……奴は四大防具の中でも最弱……。
よし。次は「靴」だ。
ん？ 不在中……とはどういうことだ？
「呪われた靴」がいない。まさかの職務放棄……だと！？
あっ…（察し）
これはある種の「大人の事情」というヤツに違いない。某ダイヤモンドの騎士の武具である「コッ●シリーズ」に「靴」は含まれていない。したがって靴のモンスター画像も存在しない。だから姿を見せられないのだ（誰視点）
じゃあ一体どうしろというのか。そもそも存在しない「靴」を倒してアイテム入手しろとは無体にも程がある。例の老人も焼きが回ったか？
残るは「靴」と「小手」の2つのみだが、そのひとつである「靴」が見当たらない。
いや……ちょっと待てよ。
以前に「デュエルの洞窟」をクリアした際に、王様が「ハルシュタインの靴を……」とか言ってなかったか？
さらに記憶を辿れば、最初に「カラムの洞窟」の攻略を完了した時にも、王様が「よくぞ、ハルシュタインの小手を……」ってこれは！？
クリアアイテムの鑑定料金が高額だったため、鑑定もせずにそのままトランプル城へと持ち込んだわけだが、ひょっとすると……。
急ぎ城塞都市へと引き返し、ラフネックの酒場でアイテムボックスの蓋を開ける。
どういうわけか「無限に拾える」ために集めておいたクリアアイテムの「靴」が6足、そして「小手」が6双。
保存箱から一組ずつ取り出し、ドジャー商店にて鑑定を願い出る。
あった。
燦然と金色に輝く「靴」と「小手」が眩しいぜ。
灯台下暗し。探し求めていたものは「最初から手元にあった」という王道展開である。
地上消滅の危機を救う鍵となったのは幼少時から何時も傍にいた黄金のメタルスライムであるし、運命の女性は天空の勇者の血を引く幼馴染の年上金髪お姉さんなのだ。いや大富豪の清楚で可憐な令嬢もそれはそれで……。
何にせよ、これで目的の防具は全て揃ったと考えてよいのだろうか。例の老人の下へと答え合わせに向かう。
無事承認された。これで「地下10階」への進入路が開通し、めでたしめでたし。
ん？ ……何か忘れていないだろうか？
クエストボスとしての職務を放棄した「靴」とは違い、「呪われた小手」は部屋の中で律儀に待機しているんじゃあないだろうか。ここは一言挨拶しておくのが探索者としての礼儀なのでは……
……いや。やはりやめておこう。
扉を開けて遭遇したが最後、核撃呪文ニュークリアブラスト連発の洗礼を浴びて全員昇天する未来しか見えない。
悪いがこのまま「地下10階」の攻略へと向かわせてもらう。
さらば。まだ見ぬ「小手」よ……。
