天使によって課された試練(リドル)を乗り越え、「タウラ・ゴス古砦」の「二階」へと侵攻する全員聖職パーティー。
では、探索を開始する。
新たなる階層を歩き始めて早々に、凄まじい勢いで流れる水流が前方に姿を現した。
水路に飛び込めば、流れ着く先で帰還路が確保できる保証はない。闇雲に踏み込むような蛮勇は控え、最初は陸地伝いに移動できるエリアから調べてゆくことにする。
遭遇する敵モンスターが明らかに手強くなっている。
この遺跡?に満ちる不浄なる瘴気の影響を受けているのだろうか。
ネズミよ……。
忠告はありがたいのだが――魔法使い呪文「レベル7」を使える者は、この全員聖職パーティーには一人もいないのだよ。
「テレポーテーション」の呪文は詠唱できない。だがしかし、僧侶ならば「5人」も揃っている。まさに「神様にお縋り」するのに相応しい陣容ではないだろうか。
安心してください。「エヴァキュエート」なら5回も使えますよ。
一度使用すれば忘れてしまうのが帰還呪文の欠点ではあるが、5回全てを使い切る頃には、5人の僧侶たちは皆、順次レベルアップして「エヴァキュエート」を再習得するだろう。
敵モンスターの波状攻撃は容赦ない――が、こちらもマスターレベル突破の僧侶軍団だ。
全体攻撃呪文(ワードオブカース/メテオスウォーム)を惜しげもなく連発することで、片端から敵の軍勢を薙ぎ倒してゆく。おお神よ。我らが蛮行を赦したまえ。
陸路で侵入可能なエリアを探索してみたが――
水路を避けて進める範囲など、当然ながらたかが知れている。
謎の天使に改めて助言されるまでもない。
では、覚悟を決めて激流の中に身を投じ、探索の範囲を拡げてゆこう。
水の流れに身を任せ、流れ着く先々を攻略する中で、怪しい「壁スイッチ」を発見。
恐らくは水路の流れを変化させる仕組み――もしくは随所に設置された鉄格子の開閉を操作する切り替え装置なのだろう。
壁スイッチの操作で水流を制御するパターンは、以前にも『戦闘の監獄』の「テッドの迷宮」の「地下十七階」で経験済みである。ちなみに、あの時はパーティーメンバーが全員盗賊だった。今回は僧侶呪文が潤沢に使えるだけ、攻略においてまだ余裕があると言えるだろう。
なお、前衛の僧侶たちが振るう得物は、現時点でもまだ初期装備のメイスから更新されていない。
「輝きの杖」なるそれなりに強そうな武器を入手してはいるのだが――
「両手持ち」であるという点が、装備を躊躇わせる最大の理由となっている。
AC(アーマークラス)低下と呪文抵抗「10%」を併せ持つ「盾」を捨ててまで装備する価値はないという判断である。
探索を順調に進める中で発見した「シークレットドア」の先で、敵モンスターが戦闘後に落とした宝箱に仕掛けられた「テレポーター」の罠に見事に引っ掛かってしまう。
そのまま「岩の中」へと飛び込む不運な事故のイメージが脳裏をよぎり一瞬焦ったが、幸運にも未踏破区域へと放り出され、探索に予想外の進捗をもたらす結果となった。
施錠された扉を解錠する「盗賊不在」の状況も――
司教の「アンロックドア」の呪文で難なく突破。
あとは最後まで一気に攻略を完了。
さあ。次は――
「魔宮」と呼ばれる「三階」へと挑む。