『ウィザードリィ外伝 五つの試練』Steam版シナリオエディタを用いた、ユーザーシナリオ制作講座。今回は「第3回」となる。
シナリオの「基本ルール(ゲームルール)」の設定を終え、今回からはいよいよ各種データの入力作業に移る。まずは「呪文データ」の設定から始めるのだが、実際の作業に入る前にとても大切なことを伝えておく。
シナリオエディタを利用する際に、最も大事なことは何か?
そう質問されたら、自分は間違いなくこのように答えるだろう。
入力するデータは事前に準備しておけ。
シナリオエディタ上での作業に取り掛かる前に、あらかじめ入力する各種データをローカルPC上で作成しておくことで、作業効率は何倍にもなる。
呪文リストを事前に作成する
そんなわけで、今回のシナリオで採用する「呪文リスト」について、事前に検討しエクセルのシートにまとめてみた。
「魔法使い呪文」「僧侶呪文」ともに、各呪文レベル(レベル1~7)ごとに3つ、もしくは2つの呪文を習得する設定とする。
また、プレイヤーキャラクターの呪文リストには含まれない「アイテム専用」の呪文、ならびに「モンスター専用」の呪文も登場させる。
「アイテム専用」「モンスター専用」の呪文は、シナリオエディタの仕様上「魔法使い呪文」「僧侶呪文」のどちらにも該当しない特別な呪文となる。
これらの呪文にはどのような意味があるのか?
戦闘時に呪文を詠唱した場合、相手の呪文抵抗(「魔法使い呪文抵抗」&「僧侶呪文抵抗」)を完全に無視(呪文抵抗「0%」扱い)して効果を及ぼすという特性を持つようになるのだ。(※「マジックスクリーン」の呪文による魔法障壁で防ぐことは可能)
なお、呪文名称は基本的に『五つの試練』のオリジナル版をそのまま採用するが、上記の「アイテム専用」「モンスター専用」の呪文についてのみ、シナリオエディタの「呪文名変更」機能を用い、オリジナルの名付けを行うことにする。
では、この元データを参考に、シナリオエディタで「呪文リスト」の設定に取り掛かろう。
「全呪文リスト」の設定
シナリオエディタのページ上部メニュー「データ各種」から、サブメニューの「呪文リスト」を開き、「全呪文リスト」の初期状態で選択されているそれぞれの呪文を、独自設定に変更してゆく。
「魔法使い呪文」「僧侶呪文」の各レベル(レベル1~7)ごとに、任意の呪文を選択することで設定が完了する。(※重複不可)
入力する呪文のリストさえ事前に用意しておけば、入力作業そのものは極めて単純である。
そして「全呪文リスト」の設定を終えたら、シナリオエディタのページ上部メニュー「シナリオツール」から、サブメニューの「ゲームルール設定」を開き、「呪文を覚える初期値と召喚呪文」の画面でキャラクターが「作成時に覚える呪文」を忘れずに設定しておく。
「モンスターの唱える呪文」の設定
次は「モンスターの唱える呪文」の設定を行う。
プレイヤーキャラクター側の呪文リストと同様、事前に入力内容を一覧にまとめ、組み合わせを精査しておくことを勧める。
今回のシナリオでは、そもそも敵モンスターの絶対数が少なく、その中で呪文を詠唱するものは全部で「6体」しかいない。
したがって、用意した「モンスター呪文リスト」は非常にシンプルだ。
「モンスターの唱える呪文」は「魔法使い呪文」「僧侶呪文」ともに、ひとつの「呪文レベル」に対して最大「3つ」の呪文を設定できる。
モンスター呪文の「呪文レベル」は、プレイヤーキャラクター側の呪文リストにおけるレベルとは意味合いが異なる点に注意しておきたい。
プレイヤーキャラクター側の場合、キャラクター本来のレベル上昇に連動して、段階的に高位の呪文を習得してゆく。
一方、「モンスター呪文リスト」におけるレベルは、モンスターの実際のレベルとの関連性は一切ない。したがって、モンスターレベル「1」のモンスターが、呪文レベル「10」に設定した呪文を詠唱するという設定も可能だ。
そして「レベル10」の呪文を繰り返し詠唱していると、次はひとつ下の「レベル9」の呪文を唱え始めるという具合に、戦闘ターンを重ねるにつれ、使用する呪文のレベル帯が下がってゆく。MPの消耗によって詠唱レベルが下がってゆく――とイメージすればいい。
ただし「レベル11」「レベル12」は例外だ。
今回のシナリオの場合、基本的な「ゲームルール」において、呪文レベル「11」と「12」の呪文ポイントが減少しない設定としている。したがって、これらについては呪文レベルの低下は起こらず、同レベルの呪文を延々と詠唱してくることになる。
また、レベルごとの基本的な呪文とは別枠で、特定の条件下において優先的に詠唱する呪文も設定することが可能だ。
「魔法使い呪文」では、「マジックスクリーン」や「アンチマジック」の影響で呪文が失敗しやすい場合、優先的に唱えてくる呪文を設定できる。
今回のシナリオでは、呪文が失敗しやすい状況下で「クリアマジック」の呪文を詠唱させ、「マジックスクリーン」「アンチマジック」の呪文効果を消去する行動を取らせることにする。
モンスター「ホブゴブエリート」のみ、同条件下で「パニッシュ」の呪文(モンスター専用/独自名称「ゴブリン語の罵声」)を詠唱してくる設定とするが、呪文抵抗を完全に無視する「モンスター専用呪文」(「魔法使い呪文」「僧侶呪文」のどちらにも該当しない)といえども、前述したように「マジックスクリーン」の魔法障壁によって防がれてしまう。したがって、戦術的な意味は何もない。詠唱呪文を妨害された腹いせに罵声を浴びせてくる(そしてレジストされ、さらに罵声を浴びせてくる無限ループ)――という単なる演出目的だ。
「僧侶呪文」では、モンスターのHPが「1/6」以下まで減少している場合、優先的に唱えてくる呪文を設定できる。
今回のシナリオでは、「スティールライフ」の呪文でHP回復を図ったり、「ギガアーマー」での守備固め、「パニッシュ」による断末魔の叫びといった行動を取らせることにする。
「魔法使い呪文」「僧侶呪文」双方において、戦いの場にプレイヤーキャラクター側が召喚した「味方モンスター」が存在する場合、優先的に唱えてくる呪文を設定できる。
今回のシナリオでは、プレイヤーキャラクター側の呪文リストに「召喚呪文」が存在せず、アイテムの魔法効果による「自動召喚」も実装する予定がないため、この部分は設定しない。
では、リストを元にシナリオエディタでデータ入力を進めよう。
入力画面は「モンスターの唱える:魔法使い呪文」ならびに「モンスターの唱える:僧侶呪文」の2つに分かれている。
特に苦労することもなく、入力を完了。
次回は、個々の呪文の詳細な仕様を設定してゆく。