探索中の不注意な行為により、封じられていた「地獄の門」を開放してしまった全員盗賊パーティー。自分たちの失態が明らかになる前に、何としても溢れ出す「魔」を再び封印するアイテムを探し出さねばならない。
では、探索を開始する。
「杖-1」に付与された魔法効果「マップ表示」のおかげで、常に現在位置を把握できるようになっている。未踏破区域が一目瞭然であるため、進路の選択に迷うことがない。
この「地獄の門」では、遭遇する全ての敵モンスターの名称末尾に(H)の符号が付いている。地獄(Hell)の住人である証なのだろうか。これまでの迷宮で戦ってきた相手と比較して、当然ながら手強い。だが、得られる経験値もその分潤沢である。
まだ「壱階」の限られたエリアのみを探索した段階に過ぎないが、戦闘に関しては現状の戦力で対応可能だという感触が得られた。ここからさらに探索範囲を拡げるためには、下階層へと進む必要があるようだ。
「壱階」から「参階」を行き来する中で、戦闘後の宝箱から入手した「指輪」に魔法効果「博学の書」が付与されているのを発見した。
これは、ドロップアイテムの「鑑定」役がいない全員盗賊パーティーにとって最大の恩恵をもたらす魔法効果であると言っても過言ではない。
パーティー内に「司教」が不在であるため、戦利品の鑑定はこれまでずっと「商店」に依頼してきた。しかし、これからは自分たちでアイテムの識別を行えるようになったのだ。
もちろん迷宮内で入手したアイテムの効果をその場で即時確認することも可能であり、また今後は商店への鑑定料金の支払いも一切不要だ。
「地獄」の攻略は当初に考えていたよりも順調に進む。迷宮構造を確認する際の手間が省けるという点において、やはり「マップ表示」の杖は多大なる恩恵をもたらしてくれる。
そして「壱階」の北東部にて、扉に「地獄の中継地点」と記されたエリアを発見。
「商店」や「宿屋」といった迷宮内施設や、さらには「アイテムボックス」まで揃っている……が、それだけではない。
「魔法効果合成」だと!?
さらには近場にて「魔法効果削除実験室」も営業している。これらの施設を利用すれば、アイテムに付与された魔法効果の「付け替え」が可能になる?……のだろうか。後でぜひ試してみよう。
今後はこの「中継地点」の施設群を拠点として「地獄」の攻略を進めることに決め、さらに先へと探索の脚を伸ばす。
戦闘で稼げる莫大な経験値を基に、全員が「レベル50」へと到達した。そして、謎のドロップアイテム「閻魔の鍵」を入手。
まさに地獄に相応しいネーミングのアイテムだが、どこで使うのだろうか。
さて、強力な魔法効果が付与されたアイテムが集まってきたところで、そろそろ魔法効果の「合成」とやらを実際に試してみることにする。
まずは不要な魔法効果の削除からだ。
そして、対象アイテムの空き領域に別の「素材」アイテムから魔法効果を「移植」する。
これは素晴らしい。
合成する魔法効果の「素材」さえ手に入れることができれば、好きなように装備品を強化することが可能だ。世に言う「ぼくのかんがえたさいきょうのあいてむ」が創り放題になるという禁断の施設である。
トレハンの目的に新たな楽しみが加わったところで、引き続き「地獄」の攻略を進めよう。
魔法効果の合成を活用して強化された武器により、地獄の門から現出した強者たちが容赦なく骸と化してゆく。
そして……ついに「参階」の最奥部へと辿り着いた。
扉を開ける「鍵」は、既に入手済みの「閻魔の鍵」で間違いないだろう。
残された問題は、自分たちの戦力が「地獄を治める魔王」と十分に渡り合える水準まで達しているか否か……だが。
扉の奥で待ち受ける何者かに会う前に、念のため、もう一段の戦力アップを図ることに決める。
以前に「リュードの迷宮」の「地下10階」で入手した、魔法効果「強敵と遭遇」の付与された魔除け(ならぬ魔呼び)をアイテムボックスから取り出し、さらなる強敵(=膨大な経験値)を求めて迷宮を彷徨う。
たった一度の勝利でレベルアップできるほどの経験値が得られる、超高配当なボーナス戦闘の連続。もともと他職よりもレベルアップの必要経験値が少ない盗賊たちは、凄い勢いで成長を繰り返してゆく。
パーティーメンバー全員が「レベル100」に到達。そして、運命に導かれるかのように、2本目の「閻魔の鍵」を入手した。
“待”ってたぜェ!! この”瞬間”をよォ!!
例の扉の奥へと進むべき時は来た。「閻魔の鍵」で扉を開き、主の待ち受ける「宴会場」へと突入する。
宴会の主催者は……「古のゴースト(H)」であった。
ええっ!?
皆が「混乱」状態に陥ったのも宜なるかな。お前がラスボス……なの……か??
だが敵モンスターの危険性を見た目だけで判断するのは愚か者のすることである。腐っても地獄の宴会を取り仕切る主だ。いやガチで腐っているようにも見えるが……それは置いといて、相応の強敵であると心して掛かるべきであろう。
あれれ。あっさりと倒してしまった。
戦利品として「最後の鍵」を手に入れた。なるほど。これで最後の扉を開くのか。
扉の奥に隠されているものは……何であろうか。
「?魔除け」……だ。これが探し求めてきた物……なのか?
識別すると「魔法の魔除け」であることが判明。
最後は拍子抜けするほど簡単に、目的の品らしき貴重なアイテムを手に入れてしまった……が、本当にこれで良いのだろうか?
迷宮の奥底で悩んでいても始まらない。この「魔除け」を城に持ち込んでみれば、その答えが明らかになるはずだ。
そして……5番目の称号を獲得した。
呆気ない幕切れではあったが、最後の敵として「彼ら」が抜擢されたことは粋な演出であると言えなくもない。これもまたひとつの「ウィザードリィ」らしさなのだ。
さて、今回の探索行は終わった。開始当初は「全員盗賊」での攻略に不安もあったが、蓋を開けてみれば最後まで十分に楽しめる迷宮探索であった。今はただ、この余韻に浸ろう。
では、酒場で祝杯だ。
(ウィザードリィ外伝『戦闘の監獄』探索記録・完)