封印された呪文の解放を着々とこなしつつ、「地下11階」へと辿り着いた全員盗賊パーティー。このフロアには「街」が存在するはずだ。まずは新たな拠点で休息と補給を行い、次なる階層へと進む前に英気を養うのだ。
では、探索を開始する。
石像……だと!?
ようやく「街」で一休みできると思っていた安堵感を帳消しにする不吉なメッセージが、レンガ壁に掲げられている。「街」の存在に対する期待が、一気に不安で上書きされる。これは浮かれている場合ではない。慎重に進むとしよう。
最初に発見したのは「地下6階」から「地下11階」までを繋ぐ昇降機である。これ幸いと「地下6階」へと昇り、馴染みの「宿屋」にてMPを回復。改めて「地下11階」の探索に舞い戻る。
「商店」「宿屋」「寺院」の3つの施設を発見。
品揃え、サービスの質ともに上層階と特に変わりはない。恐らく同一の企業&教団により運営されているのだろう。この「テッドの迷宮」の閉鎖的な環境を考慮すれば、他の資本が介入する余地は残されていないのかもしれない。
その一方で、気になる場所を見つけた。
いらぬ魔法……即ち「呪い」等のマイナス魔法効果を除去してくれる「泉」なのか……
ちょうど無価値な「石」を持っていたため、試しに「泉」へと浸かってみることにする。
何も起きなかった……
除去できる「魔法効果の種類」や、対象となる「アイテム種別」に制限があるのか。
まあ良い。別の場所の探索を続けよう。
この「地下11階」到着後、最初に見掛けた掲示に続き、またもや不吉なメッセージが目に飛び込んできた。
石化を治療する呪文「キュアオール」は「僧侶呪文Lv6」に属するため、現時点では封印された状態にある。この階層……いやさらに下の階層の「石碑」に触れて封印を解いておけという警告と解釈すべきだろう。
当該の危険が存在するのは、現時点でマップが埋まっていない中央エリアで間違いないだろう。そこに「石化」能力持ちの何かが潜んでいるはずだ。
少々思案した後、先に下り階段から次の階層を探索し「僧侶呪文Lv6」の封印解除を優先することに決めた。繰り返される警告には素直に従うものだ。
「地下12階」への下り階段は「4箇所」見つけてある。順次攻略してゆこう。
「地下12階」へと降り立って早々に、いきなり「地下13階」への階段を発見。
さしあたって、「地下11階」から続く4つの下り階段の先で探索できる範囲は全て踏破した。
2点ほど、ここまでの探索で分かったことがある。
まずひとつ目は、この「地下12階」の未踏破区域へと侵入するためには、さらに下の階層(地下13階)を経由して上ってくる必要があるということだ。フロア間を上下に渡り歩きながら攻略する必要があるのだ。
二つ目は、中央エリアの構造だ。「地下11階」とほぼ同様の広さの侵入できない空白地帯が存在している。恐らくは、「地下11階」から降りてくる昇降機のような設備が存在するのだろう。
上下に入り組んだ迷宮構造に翻弄され、なかなか目的の「石碑」が見つからない。現在地を頻繁に確認するため「方位の巻物」はいくつあっても足りない。
仕方ない。ここは探索の方針を転換しよう。
放置していた「地下11階」の未踏破エリアの攻略に挑むのだ。
石化治療の呪文「キュアオール」は未だ詠唱できない状況だが、その一方で、「地下12階」から「地下13階」を探索する内に、攻撃呪文の巻物をいくつも入手した。
待ち受ける敵の強さは未知数だが、入手した「稲妻の巻物」や「流星の巻物」で敵全体にダメージを与えることが可能だ。後衛の集団攻撃呪文×3と併用すれば、一気に殲滅することもできるのではなかろうか。
準備を整え、扉を開く。
名前からして石化攻撃が得意そうな「ストーンフライ」の大群が押し寄せてきた。長期戦になれば不利。全員石化で全滅必至だろう。
最初から、出し惜しみ無しの「攻撃呪文×6連発」で臨む。
「ストーンフライ」の石化ブレスでパーティーは既に半壊。石像組は生存者に無言のエールを送るのみである。頑張れ。
何とか勝利。
石蠅の集団に守られていたのは、「地下11階」から「地下16階」を結ぶ「昇降機」であった。
これまでの「テッドの迷宮」における探索の経緯を踏まえると、昇降機は必ず拠点となる「街」を結ぶかたちで設置されていた。ならば、「地下16階」には各種の施設があると考えて間違いないだろう。
直通の昇降機で訪れた「地下16階」の「寺院」にて石化の治療を完了し、そのままフロアの構造を把握するため歩き回る。
北東と南西に、それぞれ「地下15階」への上り階段と「地下17階」への下り階段を発見。また、北西と南東には、何かの「転移装置」のようなものが設置されている。
それぞれの転移先は、上層の「地下1階」と「地下6階」であった。
では、今後は「地下16階」の「街」を拠点として、探索を進めよう。
昇降機を経由して「地下12階」へ侵入すると、すぐに「小マップ表示」の壁スイッチが見つかった。これは……もしかして他の階層でも同じなのでは?
やはりそうだ。「地下12階」から「地下15階」の全ての階層において、中央の昇降機から程近くに小マップの表示スイッチが設置されていた。これで探索は相当楽になる。
目下の探索目標は、「僧侶呪文Lv6」そして「魔法使い呪文Lv6」の封印された「石碑」を見つけ出し、当該レベルの呪文を使用可能にすることである。「地下12階」「地下13階」の両フロアに隠されていると考えて間違いないだろう。
「小マップ表示」が解放されたことにより、ダークゾーンの探索も問題なく進む。
「地下12階」の北西エリアにて、ようやく「僧侶呪文Lv6」の封じられた「石碑」を発見。ここまで本当に長かった。
この場所の封印を守護するモンスターは、明らかに「石化」攻撃を駆使すると思われる面々だ。
4人が石化しつつも辛うじて勝利。
早速、封印が解除されたばかりの「キュアオール」を詠唱し石化の治療を行う。
次は「地下13階」にて「魔法使い呪文Lv6」の封印解除に挑む。
当該の「石碑」の場所は恐らくここだ。だが……鉄格子を開ける方法が分からない。周囲の壁の何処かに開閉スイッチがある……のだとは思うが。
……いや違う。鉄格子を開いて入るのではない。ここから「落ちる」のか?
だが、この場所に「シュート」が仕込まれているとしても何故か作動しない。単に「レビテイト」の影響で落下が阻止されているわけではないようだ。
どこかにシュートを開通させる仕掛けがあるのだろうか?
ああ。これはまさか……
なに? 壁スイッチを押してもシュートが開かない?
逆に考えるんだ。「押さなくてもいいさ」と考えるんだ。
以前に「押して」いた壁スイッチを初期状態に戻し、例の怪しげな床へと向かう。
ディ・モールト良しッ!
シュートの機能は復活した。あとは常駐呪文「レビテイト」の効果を消去すればいい。
侵入成功。
スイッチは「押すもの」という探索者の常識の裏をかいた、見事な心理トラップである。
内側から鉄格子を解錠し、いよいよ「魔法使い呪文Lv6」の封印を解除する。
「石碑」に触れると、守護者たる猫科獣人ブラザーズが現れた。
大して苦戦もせずに勝利。
これで魔法使い呪文、僧侶呪文ともに「レベル6」の強力な呪文群が詠唱できるようになった。
さて、残りの「地下14階」「地下15階」には、最上位の「レベル7」の呪文が封印された「石碑」があるはずだが……
全員盗賊(こんなか)に「レベル7」の呪文覚えてる奴いる!?
いねえよなぁ!!?
「レベル7」呪文の詠唱者がパーティー内にひとりも存在しない以上、敢えて危険を冒して無意味に「石碑」の封印を解除する必要はない。
では、このまま「地下17階」の攻略へと向かおう。