ウィザードリィ外伝『戦闘の監獄』探索記録その８「テッドの迷宮」攻略準備編

前回「リュードの迷宮」の攻略を成し遂げた全員盗賊パーティー。しかし、救出されたハルシュタインは何かの宝珠を盗み出してそのまま逃亡中。盗賊たちには窃盗犯の追跡任務が命じられた。

窃盗犯から盗品を奪還する役目を盗賊に命じるなど世も末である。しかし、王国からの直々の依頼である以上、拒絶する選択肢など端から用意されていない。

さてここで問題となるのは、ハルシュタインが逃げ込んだ「テッドの迷宮」の特殊性である。

この「テッドの迷宮」に侵入するための条件は2つ。ひとつは、パーティーメンバー全員が「レベル1」であること。そしてもうひとつは、武器防具その他含め、所持するアイテムを手放す必要があるということだ。これまでに得てきたレベル＆アイテムを全て放棄しろとは、中々に厳しい条件である。

よくよく考えてみれば、何の装備も持たない（所持アイテム無し）初心者（レベル1）に迷宮探索を命じるなど、本気でハルシュタインを捕らえる気があるのかと問い質したくなる程の無茶振りだが、恐らく迷宮自体にレベル＆アイテム拒絶の結界の類いでも張られているのだろう。ならば仕方ない。

さらに言えば、某ハルシュタインは「アイテム持ち込み不可」の迷宮にどうやって宝珠を持ったまま逃げ込んだのか、という当然の疑問も湧いてくるが、恐らく誰に聞いても納得のゆく答えは返ってこないであろう。ならば仕方ない。

では、「テッドの迷宮」の攻略開始に先立ち、諸々の準備を整えよう。

まずは「レベル1」の条件を満たすのだ。

偶然（？）にも、「リュードの迷宮」の攻略達成により与えられた報酬アイテムは「初心者の指輪」であった。秘められたスペシャルパワー（SP）の「初心」を解放することで、所有者のレベルが強制的に「1」へと戻る。まるで「テッドの迷宮」攻略のために用意されたような便利アイテムである。

この指輪のSP効果により、「リュードの迷宮」クリア時点で「レベル20」だった盗賊たちは、皆一律で「レベル1」の状態に。当然ながらこれまでの戦闘で稼いできた経験値もゼロに戻る。喪失感が半端ない。

しかし、いつまでも嘆いてはいられない。失ったものではなく、手元に残ったものを数えるのだ。

幸いにも、特性値は一切減少しておらず、ヒットポイント（HP）の最大値も「レベル20」の時から下がってはいない。さらに、これまでに「書物」のSP解放で習得した数々の呪文はそのまま覚えており、それらを詠唱するためのMPも失われてはいない。

決してゼロからのスタートではないのだ。後は装備品を全てアイテムボックスへと放り込み、「テッドの迷宮」へと向かうだけ……

……と安易に考えるのは素人探索者である。「レベル20」相当分の「経験値」こそ失われはしたが、これまでの迷宮攻略で培ってきた「経験」そのものまでが奪われたわけではない。越えてきた死線の数が違うのだ。

「テッドの迷宮」の侵入条件を今一度思い返す。要するに「レベル1」であればいいのであろう。レベルアップさえしなければ、経験値はいくらあっても問題ないはずだ。

不敵な笑みを浮かべた盗賊たちは、一計を案じて「リュードの迷宮」の「地下6階」へと向かう。目的地は「素手の試練」の小部屋である。

扉を蹴り開け、そのまま小部屋に侵入。待ち構えていた「シーゲッズ」の群れと会敵する。

こちらは全員「レベル1」である。しかも一切の武器を装備していない。物理攻撃を試しても、相手に触れることすらままならない。しかし攻撃呪文は別である。その威力を遺憾なく発揮してくれる。前衛は皆防御に徹し、後衛陣の攻撃呪文で殲滅するのが現状における最良の戦術だろう。

一度の戦闘で一人当たり3万を超える経験値を獲得した。これは美味しい。ここで暫く経験値を稼いでいたいところだが、三度交戦すると後衛のMPが尽きてしまった。宿屋に泊まればMPは回復するが、同時にレベルも上がってしまう。そこで「地下9階」へと赴き、魔力の泉へ浸かってMPを全回復させる。前衛の被ダメージを「キュアオール」で癒やしておくことも忘れてはならない。