監獄都市からの釈放を目的として、地下監獄の探索を開始した「全員盗賊」という6人組。
地下監獄の「B級監獄」におけるハクスラで「レベル5」まで成長した彼らにとって、この階層はもはや敵無しの様相だ。そこで、いよいよ次なる階層へと下ってゆく決断を下す。
では、探索を開始する。
昇降機で降りてきた先には「A級監獄」の扉。意味深な助言である。この先には、如何なる囚人達が待ち受けているのであろうか。
新たな階層で、最初に遭遇したのはこいつらだ。
オーケーなるほど。扉の箴言の意味……十分に理解した。とりあえず、敵の強さを把握するために戦闘を繰り返すことにする。
総計10数回に及ぶ遭遇戦の末、この階層における戦闘感覚が掴めてきた。
敵の数は比較的多い。だが数の多い敵でも臆せずに戦えば、相手が逃走し勝手に数が減る。したがって、集団殲滅呪文が無くとも何とかなる……はずだ。また、HP残量は常に「30以上」を維持していれば死亡リスクは少ない。
結論としては、特定のヤバい敵との戦闘さえ回避していれば、現在の戦力でも十分に通用することが分かった。
ただしその一方、新たな問題が顕在化してきた。HP回復の手段を再検討する必要性である。パーティーメンバー全員盗賊であるからして、当然ながら「HP回復呪文」を唱えるスペルユーザーは存在しない。
一度の探索行で決して軽微とは言えないダメージが累積するため、監房の「簡易寝台」や「エコノミールーム」でHPを回復しようとすると、二桁週間の宿泊も珍しくない。これでは、すぐに年を取ってしまう。
とは言え、HP回復呪文「ヒール」が使える「薬草」(商店購入価格:100GP)の購入代金も馬鹿にならない。HP回復量が一回につき「1~8」と少ないため、大量に消費する必要があるのだ。
良質なアイテムと経験値を求めてリスクのある「A級監獄」を探索し、実際に相応の稼ぎもあるのだが、その一方で受けるダメージが増加し、HP回復のために手元の現金が湯水のように消費される。まるで事業拡張に邁進する余り資金が枯渇し倒産する何処ぞのイケイケ新興企業ではないか。
司教の不在により、入手したアイテムを「鑑定して売り捌く」というメルカリ的金策は封じられている。宝箱から得られる申し訳程度の現ナマ。それが収入の全てである。このままでは財政的に破綻する。間違い無い。抜本的な経営……もとい探索改革が急務である。さてどうするか?
要は、リスクが大きい「A級監獄」の探索を進めつつも、そのために必要な「HP回復資金」を得られる現金収入が別にあれば良いわけだ。ならば、戦闘で受けるダメージがほとんど皆無となった「B級監獄」でHP回復資金を稼ぐのだ。それしかない。
装備強化や経験値稼ぎといった面では魅力の薄れた「B級監獄」ではあるが、「現金収入」と「HP回復支出」との収支バランスという観点で見れば「A級監獄」よりも圧倒的に優れている。
主戦場となる「A級監獄」では攻めの探索を行い、安全な「B級監獄」では守りの探索でHP回復資金の確保に従事する。
この事業計画……いや探索計画ならば、パーティーの財政破綻を避けつつも効率的なレベルアップ&装備充実を実現できるはずだ。
「A級監獄」で激戦を生き延び、大量の経験値と高性能(多分)な装備を手に入れる。
そして「B級監獄」では安全に稼ぐのだ。
そんな探索行を繰り返す中、「A級監獄」における戦闘後に新たなアイテムを入手。不確定名「?危険物」である。
戦闘中に使用効果を確認すると……。
メガファイア!
単体物理攻撃しか戦闘手段の無かった盗賊パーティーにとって、待望の「集団攻撃呪文」である。しかし、浮かれて安易に使用してはならない。此処ぞという勝負所で活用する時のために、奥の手として温存しておくのだ。
しかし地下監獄には、手癖の悪い奴らが徘徊しているのも事実だ。
盗むなよ!
盗むなって!
だから盗むなぁぁぁ!!!
敵の盗賊連中の盗みに閉口しながらも探索を続ける中、気になる「?小物」アイテムを入手。
識別価格は「2500GP」である。これは高性能なアイテムの予感。早速装備してみると……。
戦闘後の「現金収入」が増えている……だと?!
収入源の限定された貧乏パーティーにとって、ある意味これほどありがたいアイテムも無いだろう。ありがたく活用させて頂くこととする。盗むなよ。誰も盗むなよ!
その後は順調にハクスラ&トレハンに勤しんだ結果、全員が「レベル8」へと到達。ようやく攻撃回数が「2回」へと増えた。
この攻撃回数「2回」という数字。前衛職の戦士や君主であれば「レベル5」で既に到達している数値だ。また3レベルごとに攻撃回数の増加する侍や忍者ならば、レベル8の時点で侍なら「3回」、最初から2回攻撃可能な忍者に至っては「4回」まで上昇している。
だが、盗賊故の攻撃力不足を嘆いても始まらない。兎にも角にも理論的な物理ダメージが倍増したことを素直に喜ぶべきだろう。
また、周囲の闇を照らしてくれる「明かり」の継続魔法が自動発動するアイテムを入手できたことも朗報だ。これにより、探索が一層捗ることになるはずだ。
「A級監獄」における戦闘を無難に切り抜けることができるようになれば、さらに先へと進むことを検討しよう。